2012年08月15日

アリストテレスとカメレオン

カメレオンはいつ頃から世界の人々に知られるようになったかを、大航海時代からローマ時代と遡ってみましたが、遡ることのできる最後がギリシャ時代です。
 
ここで登場するのは、古代ギリシャの哲学者アリストテレス。
アリストテレスは万学の祖、西洋科学文明の礎を作った人とも言われていますが、我々一般人にとっては、「そういえば学校の教科書に出てきたなあ・・・何した人だっけ?」・・・くらいにしか認識がないのが現実ですよね。
 
 
ところが、彼が著した「動物誌」をパラパラとめくってみるだけで、そのすごさに圧倒されます。
何しろアリストテレスが生まれたのは紀元前384年。
日本が縄文時代から弥生時代に移行してまだ間もない頃です。
そんな時代に、現代でも十分通用する動物に関する詳細な観察記録(全520種)とその分類、発生等の科学的な思索を行っているんですから・・・。
 
 
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それでは、紀元前の人アリストテレスがカメレオンについてどんな記述をしたかを以下箇条書きで書き写してみます。
 
【動物誌第11章より】
1)カメレオンは全身の形はトカゲのようである。
2)肋骨は魚類のように下の方へ延びて下腹部に達している。
3)背骨も魚類のように同様に上へと突き出ている。
4)顔つきはブタに最もよく似ている。
5)尻尾は非常に長くて先が細くなり、大部分は革ひものように巻いている。
6)地面からの距離という点ではトカゲよりも高いところにいるが、脚の関節の曲がり方はトカゲのようである。
7)カメレオンの足はそれぞれ2部分に分かれ、各部分はわれわれの親指とそれ以外の手の部分とに対置に似た関係にある。
8)2つに分かれた部分はそれぞれ更にまた少し先で若干の指に分かれる。すなわち前足は体の側(内側)の部分が3指、外側の部分が2指で後足は体の側が2指、外側が3指に分かれている。
9)指には曲爪類(猛禽類)の爪に似た小さい爪もある。
10)全身はワニのようにざらざらしている。
11)目は窪みに入っていて非常に大きく、球状で、体の残りの部分と似た皮膚で囲まれている。
12)真ん中のところに小さな見るための孔があいていて、ここを通してものを見る。
13)ここが皮膚に被われてしまうことはない。
14)目玉をぐるぐる回し、視線をあらゆる方向へ転じ、こうして見たいものを見るのである。
15)体色の変化は空気が入ってふくらむときに起こる。
16)体色はワニとそう違わないような黒い色とトカゲのような灰緑色にヒョウのような黒い斑点の入った色とある。
17)こういう体の変化はカメレオンの体全体に起こるもので、目も尻尾も体の他の部分と共に同じように変わるのである。
18)カメレオンの運動はカメのように極めて緩慢である。
19)死にかけると灰緑色になり、死んでしまっても色はそのままである。
20)食堂と気管の模様はトカゲの場合と同様である。
21)頭と顎と尻尾の付け根の付近にわずかな肉片がある以外、どこにも肉はない。
22)血液も心臓と目と心臓上部との付近およびそれらから出る小血管の中にあるだけで、そこにあるといっても全くわずかなものである。
23)脳も目の少し上にあり、目と連絡がある。
24)目の外側の皮膚をはぎ取ると、細い金属の輪のようなきらきら光るものが目を取り巻いている。
25)カメレオンのほとんど全身にわたって数多くの強靭な、他の動物の膜よりはるかに優れた膜が張られている。
26)全身を切開しても長い間呼吸運動を続けるが、その際心臓は付近の運動は非常に微弱であって、肋骨の付近が特に収縮するが、体の他の部分もしないわけではない。
27)脾臓はどこにも見当たらない。
28)トカゲにように穴にもぐって冬眠する。
 
 
いかがでしょう?
なんだか爬虫類図鑑にでも書いてありそうな記述ですよね。
現代人の目線で見ると一部実態にそぐわないものもありますが、7)〜9)などから、実際に実物を見なければ絶対に書けないような詳細な観察の記録であることがわかります。
また、23)〜27)を見る限り、アリストテレスが実際にカメレオンを解剖したことが推測できます。
 
 
そして、先日記事にしたローマ時代のプリニウスのカメレオンに関する記述と比較すると結構面白い↓
比べると紀元前のアリストテレスの記述の方が圧倒的に「科学的」ですね^^
というか、後世のプリニウスはアリステレスの動物誌の記述をかなりパクッたうえ、ありもしない空想を加えていることがわかります。(まあ、元々プリニウスの博物誌は当時の空想科学本のような性格だったようですが)
さすがアリストテレスは万学の祖と云われる所以ですね。
 
 
アリストテレスは、当時アカデメイアという学校で文学、科学、医学、哲学などの講義を行っていたそうです。
つまりアカデメイアでのアリストテレスの講義がカメレオンの世界デビューと言えなくもないと思うのですがいかがでしょう?^^
 
 
 
posted by そらりく at 16:25| Comment(4) | TrackBack(0) | カメレオンの世界デビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月31日

カメレオンの世界デビュー3

紀元22年にローマ帝国で生まれたプリニウスは、古代の百科事典ともいえる「博物誌」を
著しました。
全37巻におよぶこの大著の中で第8巻と第28巻に我らがカメレオンの記述がみられます。
1世紀という日本でいえば弥生時代にこれだけの記録を残しているというのはまさに脅威的なお話
ですが、その内容を見ると「カメレオン」という生物が実在するとも想像上の生き物ともつかぬ、
なんともユニークな存在として紹介されています。
そこで今日はその記述を箇条書きにして、それぞれについて現代人の目で評価・検証してみたいと
思います。            
 
【博物誌 第8巻第51章より】
 
(1)アフリカにはカメレオンも産するが、インドにおけるほど多くは産しない。
→×(圧倒的にアフリカに多く産する)
 
(2)カメレオンは形も大きさもトカゲのようであるが、足はまっすぐでトカゲより長い
△(「足がまっすぐ」というのは恐らく「腹ばい」でなく、体を枝から離して歩く姿を言っているの
だろうと思います。
またトカゲより足が長いかどうかは一概に言えませんが、確かに長く見えますね。)
(3)魚と同じく横腹と腹の区別がない。
→×「横腹と腹の区別がなく」は意味不明。
(4)背骨も魚のように突き出ている。
→○(背中のクレストは確かに魚の背びれみたい。)
(5)身体はずっと小さいけれども、その鼻づらは豚のそれに非常によく似ている。
→×(豚鼻に似ているか?似てないぞっ)
(6)尾はきわめて長くて先が細くなり、蛇のようにくるくる巻いている。
→○(まったくその通り)
(7)爪は鉤形に曲がっている。
→○(確かに曲がってる)
(8)運動はカメのように緩慢である。
→○(カメよりはましだが、確かにトロい)
(9)鱗のある身体はワニのよう。
→△(ワニのように硬い鱗ではないが、皮膚が変化した乾いた鱗がある。)
(10)眼窩の奥にある目は非常に大きい。
→○(大きいです。)
(11)目は身体と同じ色をしている。
→×(目とは同じ色でない。)
(12)その目を決して閉じない。
→×(瞬きします。)
(13)周囲を眺めるときには瞳を動かさず、眼球全体をぐるぐる回転させる。
→○(「瞳を動かさずという表現は気になるが、「眼球全体をぐるぐる回転させる」のはその通り。)
(14)いつも口をぱっくり開けている。
→×(口はいつも開けていない。)
(15)動物の中で飲んだり食ったりしないのはカメレオンだけで、空気以外のものを口にしない。
→×(仙人ではないので飲み食いする。)
(16)笑っているような口もとは不気味な印象を与える。
→△(なるほどそういう風に感じる人もいるかも・・・)
(17)実は無害な動物である。
→△(人間にとっては無害。虫たちにとっては有害)
(18)カメレオンはしばしば目や尾の色、あるいは身体全体の色を変える。
→○(ピンポ〜ン!)
(19)自分のそばに接近するものとそっくり同じ色になる。
→×(そうか〜やっとわかった! この誤解はローマ時代からなのかっ!!)
(20)ただし、赤や白には変色しない。
→×(いえいえ、パンサーは赤や白になります。)
(21)死ねば色が薄くなる。
→○(確かに薄くなりますね。)
(22)頭と顎と尾の付け根にわずかな肉が付いているほかは、その身体のどの部分
にも肉はない。
→×(お肉あるよ。)
 
(23)血も心臓と目のまわり以外にはない。
→×(あるよ。)
 
(24)腹には脾臓もない。
→×(あるはず。)
(25)トカゲのように冬ごもりする。
→×(しません。)
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【第28巻より】
 
(26)カメレオンは大きさからいえばトカゲに近い。
→○(トカゲの1種です。)
(27)どんな動物でもカメレオンほど臆病ではない。
→×(もっと臆病な生き物はいるよね。)
(28)体色をさまざまに変化させるのは、もっぱら臆病のためである。
→×(そんなに言い切らんでも・・・)
(29)鷹の類に対しては強大な力を持っていて、頭上を飛ぶ鷹を自分の方へ引き寄せ、
思いのままに八つ裂きにする。
→×(やっ、八つ裂きにするってどんなんよ。)
(30)カメレオンの頭と咽喉を樫の木の上で焼けば、雨と雷を同時に誘発することが
できる。
→×(コワっ)
 
(31)カメレオンの肝臓を瓦の上で燃やしても同じ効果があるという。
→×(ヤメてっ)
 
 
以上31項目挙げてみましたが、古代の人々の観察力あるいは想像力にはついツッコミを入れたくなる
ほど面白いですね^^
当時はカメレオンを実際に見た人はほとんどおらず、過去の文献と伝聞でプリニウスはこれを書いた
ようです。
例えて言うなら、現代の「河童」について記述しているようなものかもしれません。
でも現代の人々が一般に抱くカメレオンのイメージにも繋がる表現があったりして、カメレオンは古代
から今に至るまであまり変わらずにミステリアスな存在であり続けているのですね。
 
posted by そらりく at 21:13| Comment(0) | TrackBack(0) | カメレオンの世界デビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月24日

カメレオンの世界デビュー2

先日、大航海時代に「カメレオン」という生き物が世界(主にヨーロッパの人々)に広く知られるようになったと空想してみましたが(http://blogs.yahoo.co.jp/sorariku1963/article/304465385.html)、これは「実在するリアルな生物としてのカメレオン」のデビューであろうと思います。
 
実はそれより1500年以上昔のギリシャ時代、ローマ時代に既にカメレオンは世界デビューを果たしています。
でもそれは「実在するリアルな生物としてのカメレオン」というよりは、「怪物」や「想像上の生物」と同列に語られる「伝聞による荒唐無稽な生物」の紹介といった類のデビューだったようです。
 
ギリシャ時代のことについてはまた別の機会に譲るとして、今日はローマ時代のカメレオン・デビューについて・・・
 
 
時は1世紀の古代ローマ時代。
プリニウスという博物学者が現した「博物誌」に、カメレオンについての記述がみられます。
 
考えたらスゴイことですね。
1世紀といえば、まだ日本が弥生式土器をゴソゴソ作っていた時代。
文字なんていうものすらなかった時代に、ヨーロッパ人は既に「カメレオン」についての伝聞の記録を残しているんだから・・・。
 
 
残念ながら原書は読んでいませんが、澁澤龍彦の「私のプリニウス」にそれは1章を割いて詳しく紹介されています。
 
 
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では、プリニウスは博物誌の中で「カメレオン」について一体どんなことを書いたか???
 
興味あるでしょ?
ワクワクするでしょ?
 
それは・・・・・・・・・・・・
 
今日は時間がないのでまた後日!
コノヤロ〜^^;
 
 
 
posted by そらりく at 18:28| Comment(0) | TrackBack(0) | カメレオンの世界デビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月05日

カメレオンの世界デビュー

 
今日のお話は事実と空想を織り交ぜたもの。
軽〜く読み飛ばしてください^^
 
 
『カメレオンという生き物の存在が、その棲息地であるアフリカやアジアのごく限られた地域の現地人
以外の人々に広く知られるところとなったのは一体いつ頃か・・・・・?』
つまり『カメレオンの世界デビュー』について想像してみます。
 
 
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それを推測するための鍵は意外にも「星座」。
「星座」とはまた唐突なと思われるでしょうが、具体的な年号まで推測できます^^
 
 
時は15世紀。
ポルトガル・スペインといった西南ヨーロッパ人により始まった大航海時代。
当初はインドの胡椒を求めて海に乗り出した彼らの小さな野心は、のちにヨーロッパ近代国家
による非ヨーロッパ地域の植民地化という事態を招くことになるのですが、それはさておき、
ここではカメレオンのお話。


大航海時代にケイザーという人物がいました。
この人はオランダの航海士で、助手のホウトマンとともに冒険的な航海をすることを生業と
していた。
航海の目的の1つは航海をしながら星空を観測して、地理学者である師のプランシウスへ
天球儀作成のためのデータを持ち帰ることだった。
彼らは旅の途上で出会い、または見聞したそれまで見たことも聞いたこともない風景や生き物
の姿に感動し、驚愕し、そしてそれを星座に置き換えてデータとして本国へ持ち帰った。
例えば、クジャクやトビウオやイルカやゴクラクチョウとして・・・・

そして、その中で群を抜いて彼らの好奇心をそそり、興奮を誘った生き物・・・・
それが「カメレオン」だった。

かれらは、この奇妙な生き物の存在をなんとか本国の人々へ伝えたいという思いから
「カメレオン座」を考案した・・・・
 
 
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Yahoo!百科事典によると、「カメレンオン座は天の南極に近く、日本からはまったく見られない
南天の星座。4等星以下の暗い星からなる星座のため、カメレオンの姿を想像するのはむずかしい。
ドイツのバイヤーJohann Bayer(1572―1625)が1603年に刊行した全天星図『ウラノメトリア』に
初登場するもので、原形は15世紀のオランダの航海者ケイザーPieter Dirkszoon Keyserや
ホウトマンFrederick de Houtmanらによって考えられていたのではないかといわれている。」
とあります。

 
こうしてカメレオンの存在は大航海時代に初めてヨーロッパの人々の知るところとなった。
そして、さらに1603年の「カメレオン座」の設定による文献デビューによって、その姿形が文字情報
として初めて記録として残され、それをきっかけに全世界の人々に認知されるようになった・・・・
 
大航海時代と星座とカメレオン・・・夢のあるお話でしょ?^^



posted by そらりく at 22:36| Comment(4) | TrackBack(0) | カメレオンの世界デビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする